※インタビューの全文を紹介しております。
 
リサイクルの社会文化環境学_01
_日本の問題点
中井:もう少し、フロート板ガラス、合わせガラス、複層ガラスのリサイクルについて話を進めたいのですが、いちばん最初に先生がおっしゃった経済性についてやれるところからやろう。そして、あるいはカレットの品質についても取り組めるところから使って、それをさらに進めていったらいいのではないか。そういった割り切りがあるとおっしゃていましたけど、特にリサイクル・環境・経済性、このへんについてお先生の基本的な考え方はお持ちでしょうか。

清家:基本的な考え方と言われると難しいのですが、なぜ、難しいかと思っているかと言うと、判断が難しいなと。つまり、ガラスを無理してでも回収してリサイクルをするのが正しいのか、ガラスは捨てて他のものをリサイクルするのに、みんなコストを使ってでもふさわしいのか。どっちが大事なのかというコンセンサスを得るのが難しい。コンセンサス以前に学者として難しいと思うのは公平な指標、どっちが大事なんだよ、という指標が未だないんですよ。ものすごく大きなレベルでいえばあるのですが、つまりCO2の排出をできるだけ抑えましょうとか、ということはすごく簡単なことなんですけど、エネルギーとかCO2の排出という地球環境のレベルではなくて、リサイクルというのは、やっぱりエネルギーを使うということと、物を運ぶのに限界があるというローカルなところで全体を考える。その影響度が地球なら簡単ですね。それから、家の中なら簡単ですけど、ちょうど中途半端なところに広がっているんです。国レベルで考えるのが一番だと思うのですけど、例えば日本において、北海道のゴミを沖縄にもっていくことは有り得ないので、やっぱり県単位かと思うのですね。日本で県単位で判断することの正しさとか、それが日本に対してどれだけいいことがということを、表示できる指標がないです。例えば、○○県がすごく努力しているとか、日本のために、これだけやっているというアピールができないと、この件について頑張る理由がないんですね。その見返りとして日本政府からバランス考えてこれだけ頑張っているからこれだけのコストをあげましょうと。つまり、どれぐらいの範囲で頑張ると、どれくらいの範囲に貢献できるかという評価のしくみができないと、なかなかこれがいいとか悪いとか、正しい判断があるいは戦略的に日本は資源重視だとCO2排出量の削減重視なのか戦略を打ち出すような判断ができるだけの評価指数が未だないのではないか。

中井:それは、すごく面白い話だったのですが地域的な広がり、材料を特化して考えるのか、全体で考えるのかで経済性も異なってくるのですね。

清家:日本全体でそういう環境への影響をはかる仕組みを、それから世界それぐらいの範囲ですとLCAとか環境をはかる世界では、いろいろな指標が出てきているのですが、ことにリサイクルということになると廃棄物を運びたくないというしばりが大きくて、しかも生産地と需要地で元々つくっているところと、元々ゴミをだすところが離れているという問題もありますし、それをどのレベルでやることが日本で正解なのかという、判断する評価方法がまだないわけです。これは、みなさんの問題以前に、我々の学者たちが関わっている問題だと思っているのです。
 
_ブラウン管リサイクル
中井:私は少なくともフロート板ガラスのリサイクルは物流をマネージメントしたら、経済的に成り立つ可能性があるかなと、今まではリサイクル原料の方が高いという先入観があったのですけれども、物流のマネージメントをしたら成立する可能性があるなと、これが知見として得られたことが一番大きかったのですが、今の先生のお話しに関連すると、ブラウン管はどちらかというと地球全体の規模になっていて、日本は既にブラウン管はすでに生産はしていないので、むしろブラウン管の排出する国が生産している国に世界規模で運んでいる問題が生じていますか。この点について先生はどうお考えでしょうか。

清家:そうですね。これは驚いてドイツに行って日本のことに気がついたのですが、ちょっと恥ずかしい話ですが、ブラウン管は鉛を含んだガラスですが、日本とかドイツとか液晶テレビが発達してそれがために、それをリサイクルする方法がなくなって、まだ、ブラウン管をつくっている国に輸出すると。ブラウン管は鉛なので、有害物質と捉えかねないのです。それは2国間協議でみて、持って行くという仕組みができているということでしたね。それを、どんどん100年単位でやっていくと、いちばん最後にブラウン管をつくっている国に世界中の鉛ガラスが集まってくるということでいいことなのかと。例えリサイクルがやれるといってもいいことなのか引っかかったんですね。

中井:まさに、そういう点が社会文化環境というところですね。
 
 
 
文責:横浜国立大学 講師 志村真紀
 
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