●技術委員会 | ||||
ガラス中の微量金属成分分析方法について | ||||
平成19年1月 ガラス産業連合会環境技術部会 微量成分分析WG |
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背景 | |||
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ガラス産業連合会環境技術部会での微量成分分析WGの設置と団体マニュアル公開までの経緯 | |||
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分析マニュアルを作成するにあたっての基本的考え方について | |||
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ガラス中の微量金属成分分析マニュアル | |||
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今後の課題と方針 | |||
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マニュアル実証試験データのダウンロードは こちらから | |||
1_背景 電気・電子機器についての特定物質使用禁止指令(RoHS指令)がEUで平成18年7月に実施されるに伴い、材料メーカーが材料中のRoHS規制物質(Pb,Cd,Cr,Hg)の含有量を分析し、非含有証明をユーザーに提出する必要性が生じている。このような動きに伴い、例えば有機材料の分析方法については、社団法人日本化学工業協会が、平成15年に経済産業省による委託開発事業において標準分析方法の開発を行い、分析方法を提示している(http://www.jcla.org/news/)。また、IECにおいても金属材料、ポリマーについての標準分析方法が議論されている。 ガラスは安定な材料であり、廃棄時に含有された有害金属が排出されるリスクは他材料と比較して極めて低いという認識もあり、上記の流れで扱われてこなかったが、現実問題として、電気・電子機器メーカーから含有量測定結果を求められるのは他材料と同じ状況ではある。ガラスの化学分析を行う場合は分解方法が有機材料などと大きく異なっているために独自の分析方法が必要であるが、ガラス中の微量金属成分を分析する標準的な方法は現在なく、各社それぞれ対応しているのが現状である。 |
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2_ガラス産業連合会環境技術部会での微量成分分析WGの設置と団体マニュアル公開までの経緯 ガラス産業連合会環境技術部会においては、平成16年度から欧州規制を活動テーマにとりあげ、部会で情報交換や議論を行うと同時に、平成16年12月6日に「ガラスのリサイクルと有害金属に対する規制」寺井良平氏、寺井技術士事務所)、平成17年4月7日に「REACH(化学物質規制)提案規則とその対応」(講師:社団法人 日本化学物質安全・情報センター 西峰雄氏)、平成17年9月1日にRoHS対応分析についてのショートセミナー(講師:旭硝子株式会社 秋山良司氏、日本電気硝子株式会社 中村敏治氏)の3回の講演会を開催した。 その中で、ガラス産業連合会として統一的な分析方法についてのマニュアルを設定することはメリットが大きいという合意に達した。そのため、平成18年3月末までに団体マニュアルを作成することを目的として、各団体から専門委員を選出して微量金属成分分析WGを設置した。 平成17年11月から平成18年3月の間に6回の委員会が開催され、次項に示すような議論を経て、平成18年3月末に団体マニュアルを作成した。その後、各団体において平成18年7月から8月にかけてこのマニュアルを使用して標準試料の分析を行って、マニュアルに問題がないことを検証した。 |
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3_分析マニュアルを作成するにあたっての基本的考え方について 微量成分分析WGではマニュアルを制定するにあたって、対象、方法などについて議論を行った。議論の大きなポイントとしては以下のようなものがあった。 a. 分析対象製品について 分析が必要となる対象はエンドユーザーに出荷される製品であるため、ガラス素材だけではなく有機材料、セラミック材料との複合製品を分析する必要性も生じている。しかし、それは多岐に渡っており、統一して扱うことが難しいと考えられるため、ガラス素材のみを分析対象としてマニュアルを作成した。ただし、ポリマーコートされたガラス繊維のように付加された材料の割合が大きく、なおかつ重要度の高い製品については、処理方法を記載したほうが良いと考えられるため、前処理方法を記載した。 b. 従来規格との整合性 ガラス中の微量成分分析方法は現有のものがないが、ガラス母材に多量に存在する成分を分析する方法として、ソーダ石灰ガラスの分析方法(JIS R-3101)、ホウケイ酸ガラスの分析方法(JIS R-3105)などがある。実際には、微量成分分析を行う場合にも、溶解方法などはこれらの規格がベースになっていることもあるため、可能な限りこの2つのJIS規格に準拠する形でマニュアルを作成した。 c.対象とするガラス組成と元素について ■対象元素について RoHS規制対象の元素は、Pb、Cd、Cr6+、Hgであるが、今回は現状各社で分析が行われておりマニュアル化が可能な範囲を考えてPb、Cd、Cr(全量)とした。Hgについては、溶融中に揮発してガラスの中には残留していないと考えられるが、ユーザー側から分析の要請がある状況を考慮して、可能性のある方法は注釈に記した。また、Cr6+については現状では信頼性の高い汎用分析方法が想定されないため、本マニュアルにおいてはCr全量の分析方法とした。また、Cr6+の分析についても可能性のある分析方法は注釈として記載した。 ■ガラス母組成について 電気・電子機器用ガラスの母組成は多岐に渡っており、それをどのように扱うかがこのマニュアル作成のための大きな論点でもあった。母組成が異なることでどのような問題が生じるかについて議論したところ、以下の2点であった。 |
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1. |
ガラス組成ごとに酸に対する溶解性が異なるため、分解方法が異なる可能性がある。フッ酸を利用することはどのガラスについても共通であるが、そこに加える酸を硫酸、過塩素酸、など組成に応じて選択しているのが現状である。 | |||
2. |
母材中の元素は金属元素と比較すると量が多い。そのため、ごく少数のケースであると思われるが、ICP分析時に干渉を起こして、重金属元素の分析値が影響を受ける懸念が完全には否定できない。 | |||
さらに、この2点について議論を行った結果、以下のような理由で、マニュアルの中で状況に応じて分析者が選択できる選択肢を設ければ、すべてのガラス組成が扱えるという見解に至り、一つのマニュアルですべてのガラス組成を扱うことにした。 1.については、適用範囲の広いフッ化水素酸+過塩素酸を基本の混酸としておき、溶けにくい組成については硫酸など他の酸を適時選択できるようにした。また酸の選択の指針についての概略を注釈に記した。ガラスの場合はほとんどの組成が混酸で溶解するが、それでも溶解しないものがあった場合はアルカリ融解というフローで処理すれば、ほぼすべてのガラス組成を分解することが可能である。 また、2.の問題を避けるためには、ICPの定量時に標準添加法を使用するとするのがよいと原理的には考えられるが、測定精度が低い、試料を多数分析する場合は手間がかかるという欠点もあり、検量線法を使用できることが望ましい。そのため、干渉が起こると考えられるケースについては、母組成と同じ元素の量を添加してマトリックスマッチングを行えばその効果は補正できると考え、検量線法も使用できるようにした。検量線法、標準添加法を状況に応じて適宜選択すれば、ほぼすべてのケースにおいて利便性を損なうことなく分析を行うことができる。 d. 蛍光X線の取り扱いについて ガラス産業連合会環境技術部会においては、平成16年度から欧州規制を活動テーマにとりあげ、部会で情報交換や議論を行うと同時に、平成16年12月6日に「ガラスのリサイクルと有害金属に対する規制」寺井良平氏、寺井技術士事務所)、平成17年4月7日に「REACH(化学物質規制)提案規則とその対応」(講師:社団法人 日本化学物質安全・情報センター 西峰雄氏)、平成17年9月1日にRoHS対応分析についてのショートセミナー(講師:旭硝子株式会社 秋山良司氏、日本電気硝子株式会社 中村敏治氏)の3回の講演会を開催した。 その中で、ガラス産業連合会として統一的な分析方法についてのマニュアルを設定することはメリットが大きいという合意に達した。そのため、平成18年3月末までに団体マニュアルを作成することを目的として、各団体から専門委員を選出して微量金属成分分析WGを設置した。 平成17年11月から平成18年3月の間に6回の委員会が開催され、次項に示すような議論を経て、平成18年3月末に団体マニュアルを作成した。その後、各団体において平成18年7月から8月にかけてこのマニュアルを使用して標準試料の分析を行って、マニュアルに問題がないことを検証した。 |
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4_ガラス中の微量金属成分分析マニュアル 1. 適用範囲 本法は、RoHS指令の対象物質の内、ガラス中のCd、Cr、Pb(注1)を分析する方法である。本法でのガラスとは、二酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウムなどの無機成分を主成分とした工業製品である。 2. 一般項目 分析方法に共通な一般事項は、JIS K0050(化学分析通則)、JIS K0116(発光分光分析通則)、JIS K0121(原子吸光分析方法通則)による。 3.1 要旨 分試料をフッ化水素酸および適切な酸との混酸(注2)で分解する。蒸発乾固させた後、残渣を硝酸で溶解し、ICP-AESによる発光強度を測定してCd、Cr、Pbを定量する。 3.2 試薬 試薬は次による。試薬は必要に応じ、精密分析用を用いる。 |
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(1) | フッ化水素酸(46〜50%) | |||
(2) | 硫酸(1+1) | |||
(3) | 過塩素酸 | |||
(4) | 硝酸(1+1) | |||
(5) | 硝酸(1+50) | |||
(6) | 炭酸ナトリウム(無水) | |||
(7) | 水 イオン交換水 (JIS K0557のA2およびA3の水、あるいはISO 3696のGrade1および2の水) |
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(8) | Cd標準液(100又は1000μg/mL)原子吸光分析用または相当品 | |||
(9) | Cr標準液(100又は1000μg/mL)原子吸光分析用または相当品 | |||
(10) | Pb 標準液(100又は1000μg/mL)原子吸光分析用または相当品 | |||
3.3 操作 3.3.1 サンプリング |
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(1) | 試料を平均的な位置からサンプリングする。ガラス繊維のように表面に有機物がコーティングされている製品については、有機物に目的元素が含有されていないことが判明している場合、600℃で1時間程度焼成して有機物を取り除く。(注3) | |||
(2) | 器具からの汚染が入らないように留意しながら粉砕する。一般的には、めのう乳鉢を使用して粉砕しよくまぜる。試料量や試料形状によっては、不純物が入らないように留意して振動ミルなど他の粉砕器具を使用してもよい。250mm以下の粒度とした後、105〜110ーCの空気浴中で約2時間程度乾燥し、デシケーター中で放冷後、ただちにはかり取る。 | |||
(3) | 分析試料のはかり取りには、標準的な方法で較正された天秤を使用し、0.1mgまで正しくはかる。 | |||
3.3.2 試料溶液の調製 試料溶液の調製は次の手順によって行う。 3.3.1 サンプリング 分解は、フッ化水素酸をベースとして過塩素酸、硫酸(1+1)又は硝酸を混合して使用する。 |
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(1) | 試料約1.0g(注4)を白金皿(注5)にはかり取る。 | |||
(2) | 少量の水で湿らす。 | |||
(3) | 過塩素酸が残留しないようにろ紙はさらに水により良く洗浄する。pH試験紙などを使用して洗液がpH5以上になるまで洗浄を繰り返す。(この洗液は、中和など適当な処理をして廃棄する。) |
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(4) | 冷却後、少量の水で内壁を洗い、フッ化水素酸5mLを加え、よくかき混ぜて浴上で過塩素酸あるいは硫酸の白煙が出るまで加熱する。さらに5分間白煙を出す。 |
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(5) | 放冷後、少量の水で内壁を洗い、再び砂浴またはホットプレート上で加熱して蒸発乾固(注7)する。 | |||
(6) | 放冷後、10mLの硝酸(1+1)と10mL水をいれ、時計皿でフタをして水浴またはホットプレート上で加熱して可溶性塩類を溶解する。 |
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(7) | 放冷後、少量の水で時計皿を洗浄し、取り除く。 |
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(8) | 残渣が無い場合、溶液をメスフラスコに移し、水を加えて100mLとし、試料溶液とし、分析を行う。 |
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(9) | 残査がある場合は、再度、混酸の種類をかえて、(1)からの手順を繰り返し、完全溶解させる。 |
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(10) | 混酸の種類を変えても残渣がある場合は、次の3.3.2.2の手順でアルカリ融解を行う。 |
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3.3.2.2 残渣がある場合の分解 (この節については実証試験は未実施、今後実施予定) |
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(1) | 3.3.2.1の(10)の溶液をろ紙(Advantec社No.5CあるいはWhatman社グレード42相当品)を用いてろ過する。ろ液はメスフラスコ100mLに受け、ろ紙は硝酸(1+50)でよく洗浄する。洗浄した液もメスフラスコに受ける。 |
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(2) | ろ過後はメスフラスコをはずし、200〜300mLのビーカーに受ける。 |
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(3) | 3.3.2.1の(10)の溶液をろ紙(Advantec社No.5CあるいはWhatman社グレード42相当品)を用いてろ過する。ろ液はメスフラスコ100mLに受け、ろ紙は硝酸(1+50)でよく洗浄する。洗浄した液もメスフラスコに受ける。 |
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(4) | (1)の残渣とろ紙をフタ付白金るつぼに入れ、ゆっくりと加熱して灰化する。 |
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(5) | 冷却後、炭酸ナトリウム1gをいれ最初は低温で加熱し、次第に温度を上げて融解する(注8)。 |
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(6) | フタで覆いながら放冷し、硝酸(1+1)10mLを加えて水浴上で加熱溶解する。 |
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(7) | 冷却後、フタを少量の水で洗い、洗浄水は溶解液の中に入れる。この液を(2)の分解溶液を入れたメスフラスコに移し、水を加えて200mLとし分析を行う。 |
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3.3.2.3 空試験溶液の作製
空試験のために、試料を用いずに3.3.2.1及び3.3.2.2の操作を併行して実施する。 3.3.3 測定 Cd、Cr、Pbの定量はICP発光分析により行うが、予想される対象元素の含有量によっては、ICP質量分析、原子吸光分析を使用してもよい。定量を行うにおいて、標準溶液を使用して検量線を引くことを推奨する。しかし、ガラスマトリックス組成等からの干渉効果があると考えられる場合は、標準添加法を使用する。(注9) 3.3.3.1 検量線法による測定 |
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(1) | 検量線の作成:メスフラスコに試料溶液と同じ濃度になるように硝酸を添加する。Pb、Cd、Crの標準溶液を段階的に添加し定容する。マトリックスの干渉を補正する必要がある場合、ガラス組成の成分元素
(注10)を、試料溶液と同じ濃度になるように添加する。発光強度と濃度から検量線を作成し分析に使用する。 |
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(2) | ICP-AESで、3.3.2で得た試料溶液のCd、Cr、Pbによる発光強度を測定する。 |
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(3) | 空試験 :3.3.2.3で得た空試験用試料をICP-AESで測定する。 |
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(4) | 計算: (2)及び(3)で得られた発光強度と(1)の検量線から、試料溶液中の目的元素濃度(μg/mL)を求め、試料中のCr、Cd、Pbの含有量を求める。 目的元素含有量(μg/g)= (A-B)×V/m A:試料溶液の目的元素濃度(μg/mL) B:空試験溶液中の目的元素濃度(μg / mL) m:試料はかり取り量(g) V:定容量(mL) |
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3.3.3.2 標準添加法による測定 3.3.2の試料を5つ以上分取する。1つは何も加えず4つ以上段階的に濃度を変えて標準溶液を添加し、水を加えて一定量とする。ICP−AESを用いてこれらの溶液のCd、 Cr、Pbによる発光強度を測定する。それぞれの溶液の発光強度と濃度との関係線を作成し、横軸(標準溶液濃度)の切片から試料用系の分析対象濃度を求める。それを基に試料中のCr、Cd、Pbの含有量を求める。 |
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(注1) | Hgはガラスの溶融中に揮発するためガラス中には基本的には存在しないと考えられるが、分析を行う場合には、分解中に揮発が起こるため、密閉容器を使用した分解が必要である。密閉容器で分解した後、塩化スズなどで水銀を還元して生じるHg蒸気を原子吸光法を用いて測定することなどが方法として考えられるが、方法については現在、統一的なものがなく今後検討が必要である。 ガラスに含まれる六価クロムは、分解中に価数が変化することが問題であり、現在、明確な分析方法はない。分解後にCr6+をジフェニルカルバジドを用いて吸光光度法を用いて測定する方法が、瓶ガラス組成についてICG/TC2で検討され、その結果がGlass Technology Vol. 42(6),148,2001に記載されている。その中で「分解手順に注意すれば価数変化があまりないと考えられるが、一方、共存イオンやガラス組成が異なった場合は、その妥当性は不明」とされているため、今後、検討が必要である。また、蛍光X線、XANESなどを用いて非破壊で分析を行う方法も検討されているため、今後ガラス材料についても検討することは必要である。分解により価数が変わることから、現段階では、溶出法で検討されていることも多い。代表的な溶出試験法として、EPA3060A、環境庁告示第13号などがある。 |
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(注2) | 分析対象試料中の金属元素の種類とおおよその量を予備的に測定するために、蛍光X線を用いると分解酸の種類を選択する上で有効である。酸は(6)の段階で残渣がでないように適宜選択する。硫酸を使用する場合は分解温度が高くできるため、アルミナを多量に含むガラスの分解などには適している。しかし、Pb、Baが多量にガラス中に存在するガラスでは沈殿が生成するため推奨しない。 |
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(注3) | ガラス繊維の有機物成分に対象元素(Cd、Cr、Pbの少なくとも1元素)が含有されている場合は以下のような方法が考えらえるが、今後の検討が必要である。 ・ Baが共存しない場合―硫酸灰化法 (1) サンプル0.5gを白金皿に計り取り、硫酸(1+1)10mLを加える。 (2)300〜400℃のホットプレート上で白煙が出るまでカラカラに加熱する。 (3) 白金皿を650℃、30分程電気炉に入れて灰化 (4) 以下、「3.3.2試料溶液の調整 (3)」同様にフッ化水素酸および硝酸など適切な酸との混酸で分解し、以下操作を進める。 ・Baが共存する場合―密閉式酸分解などが考えられる。たとえば、(社)日本化学工業協会「化学製品中の特定微量金属成分測定法の標準化 5.密閉系酸分解―高周波プラズマ質量分析法(ICP-MS法)」参照 (http://www.jcla.org/news/20050401.shtmlでダウンロード可能) |
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(注4) | 試料量はRoHS基準値を満たすための一般的な量という認識ではあるが、各分析機関がデータの正当性を保証した上で、量を変更することは妨げない。 |
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(注5) | ホットプレートを使用する場合は、フッ素樹脂製の容器を耐熱温度に留意して使用することも可。 |
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(注6) | 試料を溶解する場合に、不足のない量と考えて規定したもの。十分溶ける限りにおいては、減らしてもよい。 |
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(注7) | 過塩素酸を使用して分解する時は乾固しない。Crが揮散する可能性があるためである。この時はシロップ状(傾けて流動性がある程度を目安にする)になったら加熱をやめる。しかしながら、揮発の可能性は否定できないため、Crの正確な分析値が必要な場合は、硫酸を使用することを推奨する。 |
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(注8) | 高温では目的元素が揮散する可能性があるので加熱しすぎないように注意が必要である。 |
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(注9) | イットリウム内部標準法は測定前後の変動、粘性変化による変動の干渉を取り除く方法として有効と考えられるため、併用しても良い。 |
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(注10) | 組成が不明の場合は蛍光X線によって測定した値を使用することもできる。 |
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参考資料 分析フローチャート ・試料分解手順 |
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5_今後の課題と方針 本マニュアルは、加盟団体に配布すると同時に、HPで一般にも公開し、広く意見等を収集する。また、このマニュアルに関連した実験等の結果などもあわせて来年度以降に標準化提案を行う予定である。 Hgの分析方法、Cr6+の価数分析方法については現在確定したものがなく今後検討すべき課題であると考えらえる。しかし、代表的な分析手法については情報交換が行われ、ある程度統一した見解が得られた。今後、いくつかの方法に焦点をあてて検討を行い、ガラスに適した分析方法であるかどうかを見極めることが必要であろう。また、分析方法だけでなくガラス中にHgが含まれないこと、ガラス中ではCrはその大部分がCr3+として含有されているという学術的な証明も必要である。 分析方法の統一、分析技術の向上は、材料の信頼性を高める上で重要な位置を占めており、今回、ガラス産業連合会加盟各社が情報交換を行い、統一的な見解を出せたことは意義深い。今後もニーズに応じて、分析技術をガラス産業連合会全体として向上させる必要性はある。しかし、その一方で、ガラスは化学的に安定な材料であり、廃棄後に環境中に暴露された場合でも、含有金属が拡散する確率は他材料と比較すると極めて低く、他材料と同等の環境規制をすべてにおいて適用すると過剰な対応となる恐れもある。そのため、ガラスの長期耐水性などの安全性評価技術を確立することで環境への負荷を定量的に示し、ガラス材料の安全性という優位性を確固としたものとすることも将来的には重要であろう。 *本マニュアルについてのご意見、ご質問等は、ガラス微量分析対応担当(gic_anal@m.aist.go.jp)まで電子メールでお願いいたします。 |
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微量成分WG委員 |
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委員長: 委員: |
赤井智子 独立行政法人 産業技術総合研究所 中村繁治 日本電気硝子株式会社 秋山良司 旭硝子株式会社 辻野敏文 日本板硝子テクノリサーチ株式会社 竹中宣夫 日本山村硝子株式会社 佐藤 睦 日東紡 山本英樹 コーニングジャパン株式会社 榛葉英治 (現オーウェンス・コーニング製造) 鵜澤孝夫 硝子繊維協会 矢澤哲夫 兵庫県立大学 西岡 洋 兵庫県立大学 |
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事務局: |
勝田忠男 (電気硝子工業会) | |||