●かわら版 |
GIC環境広報部会視察報告 2008/6/26 |
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金沢21世紀美術館
21st Century Museum of Contemporary Art,
Kanazawa
設計:妹島和世建築設計事務所+西沢立衛建築設計事務所(SANAA)
Design: Kazuyo Sejima + Ryue Nishizawa(SANAA)
所在地 :石川県金沢市広坂1-2-1
Place : 1-2-1,Hirosaka,Kanazawa,Ishikawa
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外観
内部空間(中庭を見る)
内部空間(展示ゾーンのパーティション)
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金沢21世紀美術館は、「街に開かれた公園のような美術館」を課題とした設計コンペの結果、妹島和世+西沢立衛の設計によって建てられた作品である。
直径113m、高さ15mの正円のファサードは、高透過性ガラス19+19mmの合わせ+曲げ加工した122枚のガラスによって構成され、街の四方に対して正面性をもち、外部周辺の像を湾曲に反射させ映し込みながら内部空間の様子を通している。また、正円のなかに幾つも並べられた四角形の諸室のうち、レクチャーホール、ライブラリー、そしてキッズスタジオ等の透明性の高い公共的な室はガラスの壁となっている。
美術館のなかは、多方向へ向かう廊下によって自在に動くことができ、有料展示ゾーンにおいては透明なガラスのパーティションによって廊下が区切られている。ガラスによる諸室を通してみえる向こう側の風景が見え、幾つかの中庭が配されているため内部空間全体が明るい。このような空間構成が成立しているのも、ガラスによる透明性が視覚と光をつなげ開放性と軽快さを形成しているからである。
なお、妹島和世氏はこれまでにもガラスの魅力を活かした建築作品を数多く生み出している。プリント柄を印刷したガラスによってモアレ現象を生じさせたファサードや、曲面ガラスによって歪んだ外部・内部空間の像を映し込み諸室が構成されたアメリカ・トレドのガラス美術館など、いずれもガラスの魅力と可能性を建築によって気づかせてくれる。
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金沢卯辰山工芸工房
Utatsuyama Craft Workshop
所在地 :石川県金沢市卯辰町ト10番地
Place :To-10 Utatsu-machi,Kanazawa,Ishikawa
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宙吹き作業室
デザイン室
吉田安喜さん(左)、山口京さん(右)
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平成元年に創設された金沢卯辰山工芸工房は、金沢の優れた伝統工芸の継承発展と文化振興を図るために、陶芸・漆芸・染・金工・ガラスの5つの工芸を対象とした総合機関として設立された。
その中でガラス工房にて研修している研修者は2008年度において8名である。全国的にみても研修奨励金を支給している研修機関は殆どないため、毎年行われる研修者の公募では全国からの希望者が集まり、約10倍の倍率を通過した優秀な方のみが3年未満の任期で研修をしている。
ガラス制作は吹きガラス、バーナーワーク、キルンワークなどの様々な技法に対応できるように、石膏原型室、デザイン室、切子研磨室、および宙吹き作業室があり、作業内容によって区切られたスペースが確保されている。また、工房内には展示棟と研修終了者の作品を扱うショップも併設されている。
工房の御案内を頂いた吉田さん、山口さんとの意見交換ではリサイクルへの取組みが伺えた。ガラスの原料は現在、ガラス工場から排出されたセミクリスタルガラスのカレットを使用している。このように、環境問題への対応が求められる中で、廃カレットの使用によって溶融時のエネルギー軽減や、リサイクルに前向きに取り組みたいとのこと。また、積極的にリサイクル原料を使用するには、再生原料の失透温度や組成成分などの情報を必要とし、ガラスメーカーとの交流機会をつくり、リサイクルの可能性と取り組みを工房や教育機関、作家から発信できれば、互いの相乗効果になれるのでは、と意見を頂いた。
なお、金沢市内で一般の方が利用できるガラスのレンタル工房には金沢市牧山ガラス工房、おしがはら工房があり、1日あたり約1万円で利用できる。この料金は全国的にみると比較的低価格であるため、金沢に制作活動を行う作家が集まってきているとのこと。
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横浜国立大学 講師 志村真紀 |
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