●かわら版 | |||||
美和ロック株式会社玉城工場見学レポート | |||||
環境広報部会 | |||||
1.見学日 | 2013年12月4日(水) | ||||
2.見学目的 | すべての段階での環境負荷低減への取組み活動について学ぶ | ||||
3.部会参加メンバー | 主査加藤之啓(日本板硝子)/玉巻圭子(東洋佐々木ガラス)/高橋啓市(日本山村硝子)/二田水和弘(硝子繊維協会)/鈴木正行(板硝子協会)/瀬上信(電気硝子工業会)/宮本雅子(外部スタッフ)/齋藤準(ニューガラスフォーラム)/黒光織恵(日本硝子製品工業会)/米村章(板硝子協会) | ||||
4.応対者 | 美和ロック株式会社 伊勢工場群総務部 宮本昭専任次長/ 宮嶋浩一専任課長代理 | ||||
5.美和ロック(株)概要 |
■設立 | ●1945年(昭和20年) | |||
■資本金 | ●6億1千万円(非上場) | ||||
■売上高 | ●417億円(平成24年度) | ||||
■従業員数 | ●1,475名 | ||||
■事業と主要製品 | ●セキュリティ事業 <建築用錠前で国内60%のトップシェア> | ||||
●サイン事業 | |||||
●リフォーム事業 | |||||
6.玉城工場概要 | |||||
■敷地面積 ■従業員数 ■生産数 ■工場の特徴 |
●約14万u(東京ドーム3個分) ●約1,000名 ●錠前日産25,000セット (1) 同社生産の7割を占め、日本一の生産能力を誇る (2) 開発技術センターが併設され、原材料や素材の研究をはじめ、金型の設計・製造部門が生産工場に隣接 (3) 最少ロット1個から生産し、ひとりが複数の作業を行うセル生産方式による、独自の「大規模多品種少量生産〜出荷」システム (4) 工場建屋は吊り屋根方式で柱がほとんどなく、樹木を植えた大型のライトコート(採光スペース)が設けられている。1990年第1工場竣工:設計黒川雅之 | ||||
● Report | |||||
1.立地環境と建築について |
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敷地周辺は緑に囲まれ、住宅や田畑も隣接している。伊勢自動車道の玉城ICがすぐ近くとのことであった。工場内の車道は運搬用のトラック、通勤用の乗用車が分かりやすい動線と使用する上で十分な幅員を取っている。従業員用の駐車スペースもかなり広い。 玉城工場は“人に優しい工場”をコンセプトにして設計されたそうである。工場棟・食堂棟・その他の施設で構成されている建物を、通常の3分の2程度の鋼材量で吊り上げた吊り屋根方式である。その構造により、内部空間は仕切りを極力減らした大きな空間を構成している。結果、従業員同士がお互いに顔を見て作業ができる。 しかし、現在は竣工当時とエネルギー事情が大きく異なり、省エネ対策の観点からするとご苦労も多いようである。徹底した省エネ対策とともに契約電力を下げるなどの努力により、電力コストを維持されているとのことであった。 |
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2.環境課題への取り組みについて |
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1) |
使用エネルギー とCO2排出削減 |
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場内で使用されているエネルギーは電気とガスのみで、重油は使われていない。万一の重油の漏えい事故などによる環境への悪影響が大きいことを考慮した結果とのことであった。玉城工場の10km先には、伊勢湾(車えび、あなご、のり、ふぐ等海産物の漁場)がある。 ガスは暖房用ボイラー、亜鉛メッキ、塗装等で使用されているが、大部分は電気が使用されている。ガラス産業界においても、ガラス溶解炉の重油からガス炉への転換が進んでいるが、ガス専焼では輝度不足による品質低下の問題があるため、完全な切替は困難な場合もある。ガス炉、電気炉への転換はガラス製造における課題である。玉城工場では、これ以上のCO2排出量削減は困難と言えるほどの取り組みが実施されていると感じた。 |
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2) |
省エネ・3R |
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エネルギー原単位の低減活動では平成20年度をベンチマークとして低減目標値を設定して活動に取り組んでいるが、平成24年度現在は目標未達の状態が続いており、今後の改善が望まれている。MFCAの仕組みを取り入れてコスト低減の活動を含めて活動が推進されていた。材料の利用効率の向上では成果が得られているとのことであった。 絶えず相当量のステンレス材を打ち抜いているのに残材がプレス機周辺には見当たらない。ステンレス素材として、即外販・再利用されるとのことで、工程内での端材その他についても3Rが実践されていた。 また、工場の天井には遮熱塗料を塗布し、夏場の場内温度上昇を抑える取り組み等も実施されている。 |
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3) |
排水処理 |
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2系統の排水処理設備が設置されていたが、片方は万が一の事故に備えた安全な予備設備とのことであった。工場の各工程から排出される排水の水質管理は厳格に実施されていた。国の定める規準値に対してかなり厳しい自治体との協定値が定められていて、さらに低い自主管理値によって管理されていた。 例えばBOD,CODでは、国の定める規準値120mg/lに対して協定値は10mg/lと非常に厳しい値であるが、これに対して、7.2mg/lの自主管理値を定めて管理を行っていた。実際の測定値は3mg/l前後とのことであった。この他、メッキ工程から混入するCr,Cu,Znの排出量は法令基準を大幅に下回っている。地域住民との協定を結び、さらなる低減を目標としている。 工場の敷地の一角に約25m角の調整池がある。中を覗いてみると立派な錦鯉が泳いでいる。池には工場から出る工業排水と生活排水を合流したものが一時的に貯められている。水質確認のため、鯉がしっかり役目を果たせるよう、毎日世話をされているとのことで、まるで従業員の一部のように思えた。 |
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4) |
PRTR物質使用量 |
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トルエン,キシレン,ジクロロメタンの使用量削減を実施している。使用量は生産量に比例するため、原単位ではなく使用量自体の削減を継続する事は、難度の高い取り組みであると感じた。 |
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5) |
産業廃棄物 |
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排水処理工程から出るスラッジは、重金属の万一の再析出を考慮して現在はセメントと共に固めて埋め立ての産業廃棄物としている。スラッジの段階では重量を減らすために場内で天日干しを行っていた。約15%の重量低減ができるとのことであった。 |
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6) |
生活ごみの排出削減 |
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場内の売店で販売している菓子の袋などの生活ごみ類は、回収して有価(1円/kg)で売っている。またガラスびんやペットボトル容器の飲料水は販売していない。ガラスびん製品も集めて処理すればカレットとして利用できるはずであるが、その点は残念であった。 |
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7) |
場内環境 |
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工場内レイアウトは基本的に西側から原材料が入り、東側から出荷する流れ。源流側ではダイキャストやプレス、塗装・メッキ工程といったブースが並ぶが、何れも壁で仕切られ別室として扱われていた。そのため、場内は比較的静かで騒音レベルは低い(ガラス工場とは比較にならないほど快適であった)。また、大型の集塵機も装備され、塗装等の臭いもほとんど感じることがなかった。 広々とした工場内にはエアを送るチューブが至る所に張り巡らされ、近未来的な光景である。生産ラインは、有機的な滑らかな動きの高性能のロボットアームと、人の手による流れ作業が合理的に組み合わされている。従業員には若い女性も多く、快適な職場環境であるということが一目瞭然であった。 |
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3.その他の情報 |
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○ |
玉城工場は主にレバーハンドルを製造する美和ロックの主力工場(開発技術センター・第一工場・第二工場)。原材料→プレス→塗装・メッキ→組み立て→梱包・出荷までの一貫生産体制を整え、金型製造(焼入れ工程も含む)、バネの製造など、必要な部材についても自社生産化している。また、組み立てロボットや検査機などの自社開発も盛んで、自働化・効率化が図られている。 |
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○ |
組立、検査の工程ではセル生産方式が採用されており、多くの部品棚に囲まれた作業机が整然と並んでいる作業場であった。多くの棚は地震による転倒防止のため互いに固定するという対策が施されていた。 |
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○ |
作業場には工程ごとに活動板が設置されていて、環境方針をはじめとして、5S活動、品質管理上の4M変更点管理活動、製造作業標準などが掲示されていた。 |
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○ |
”正しい仕事のチェック”というA4の1枚の見易いシートにより、作業標準では補えないワンポイント現場共有で、安全、品質を維持されているとのことであった。また、いろいろな所に書かれた”見える化”でなく、”視える化”という表記が印象的であった。ただ単に見えるのでなく、注視する思いが込められていると感じた。 |
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○ |
シリンダー錠の作成可能なパターンは1000億通り、毎日2万5千種類生産し、パターンが1巡するのに1万1千年かかる計算になる。またシリンダー錠だけでなく、カードキーや静脈認証キー等、最新技術のキーが開発生産されており改めて日本の技術の凄さを認識した。 |
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お忙しい中、宮本様、宮嶋様には長時間にわたり対応頂きまして、誠に有難うございました。生産現場を間近で見学させて頂き、貴重な工場見学となりました。見学でお世話になりました美和ロックの従業員の皆様に深く御礼申し上げます。 |
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以上 | |||||